日本では1964年の東京パラリンピックを機に車椅子使用者が使えるトイレが誕生したと言われています。
その後、車椅子の国際シンボルマークが採択されたり、大阪万博が開催されたりしましたが、当時の日本ではまだ公共トイレの中に障害者用トイレを設置する法律も規格・ガイドライン等も無く、リハビリセンターや療養施設・病院などにあった独自の器具や空間を参考に、当事者のニーズに対応していました。その後、1994年に「ハートビル法」制定、2000年に「交通バリアフリー法」施行、2006年に両法が統合され「バリアフリー法」が施行されました。
バリアフリー法の概要
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法) は、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)と「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)が一体となった法律です。
バリアフリー法は、高齢者、障害者等の移動上及び施設の利用上の利便性及び安全性の向上の促進を図り、公共の福祉の増進に資することを目的としており、本法律に基づき、ハード・ソフト施策の充実や、高齢者・障害者等を含む全ての人が暮らしやすいユニバーサル社会の実現を目指しています。
詳しくは国土交通省のホームページをご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/bf/sinpou/about.html
建築物のバリアフリー
建築分野における2つの基準
建築物の出入口や廊下、トイレなどにはバリアフリー法に基づく2つの基準があります。
建築物移動等円滑化基準(最低限のレベル)
高齢者、障害者等が円滑に利用できるようにするために必要な建築物特定施設(出入口、廊下、階段、エレベーター、トイレ、ホテルの客室、敷地内通路、駐車場等)の構造及び配置に関する基準。
建築物移動等円滑化誘導基準(望ましいレベル)
高齢者、障害者等が円滑に利用できるようにするために誘導すべき建築物特定施設の構造及び配置に関する基準。
詳細はこちらからご確認いただけます。(1.2.建築物におけるバリアフリー法への対応(1)建築物に関するバリアフリー法の仕組み参照)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001402840.pdf
適合義務と努力義務
適合義務
誰もが日常利用する建築物や老人ホームなど特別特定建築物(※1)で一定規模以上の新築等(※2)を行う建築主等は、バリアフリー化のための必要な基準(建築物移動等円滑化基準)に適合させなければなりません。対象とする建築物の用途、規模や建築物移動等円滑化基準の内容については、地方公共団体の条例により強化することができます。
努力義務
特別特定建築物(※1)のうち新築等を行う床面積の合計が一定規模(※2)に満たない場合や既存建築物、特定建築物(※3)について新築等を行う建築主等は、建築物移動等円滑化基準に適合するよう努めなければなりません。
※1 特別特定建築物
・不特定かつ多数の者が利用する百貨店、劇場、ホテルなど
・主として高齢者、障害者などが利用する老人ホームなど
※2 一定規模以上の新築等:建築工事をする床面積の合計が2,000 ㎡(公衆便所については50 ㎡)以上となる新築、増改築や用途変更
※3 特定建築物:学校、卸売市場、事務所、共同住宅、工場など、多数の者が利用する建築物
特定建築物と特別特定建築物の詳細はこちらからご確認いただけます(1.2.建築物におけるバリアフリー法への対応(2)バリアフリー法の対象となる建築物参照)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001402840.pdf
バリアフリー法(建築物分野)の概要をまとめると以下のようになります。
出典:高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(1.2.建築物におけるバリアフリー法への対応
(1)建築物に関するバリアフリー法の仕組み)(令和3[2021]年3月国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001402840.pdf
建築設計標準
バリアフリー法の対象である建築物には、「建築設計標準」というガイドラインが定められています。全ての建築物が利用者にとって使いやすいものとして整備されることを目的に、設計者をはじめ、建築主、
審査者、施設管理者、利用者に対して、ハード面やソフト面で必要とされる標準的な整備内容や望ましい内容を具体的に示しています。
詳しくは国土交通省のホームページをご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_fr_000049.html
建築分野における基準の見直し
建築物移動等円滑化基準
国土交通省は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の一層の促進を図るため、建築物移動等円滑化基準を改正しました。(公布:2024年6月21日/施行:2025年6月1日)
車椅子使用者用便房の設置数
改正前 | 改正後 |
---|---|
・建築物に1箇所以上を設ける |
<標準的な建築物> <大規模階を有する建築物> ※ 建築条件に応じた設計の自由度を確保するため、設置箇所は任意とする。 |
建築物移動等円滑化誘導基準
国土交通省は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の一層の促進を図るため、建築物移動等円滑化誘導基準を改正しました。(公布:2024年11月21日/施行:2025年6月1日)
車椅子使用者用便房の設置数
改正前 | 改正後 |
---|---|
・各階に1箇所以上を設ける |
・便所のある箇所に1箇所以上を設ける |
出典:建築物のバリアフリー基準の見直し方針
建築物のバリアフリー基準の見直しに関する検討WG報告(令和6年3月29日)国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001735422.pdf
詳しくは国土交通省のホームページをご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000183.html