自宅でも外出先でも、排泄は年齢・障害の有無に関わらず人間にとって不可欠な行為です。そのため、だれもが快適に利用できる公共トイレを整備していくことは、高齢者、障害者をはじめとするあらゆる人々が行動範囲を広げるための重要な要素です。
公共トイレとは?
不特定多数の方が利用する建物(駅、商業施設、公園、学校や事務所など)のトイレを指します。どんな方に配慮が必要?
例えば車椅子使用者、オストメイト、乳幼児連れや高齢者など。さらに、男女別のトイレに入りづらさを感じられる方など、多様な利用者が想定されています。
公共トイレにおける多様なユーザーへの配慮
車椅子使用者用トイレ
車椅子でトイレを利用するには、スムーズに通過できる出入り口やトイレ内で方向転換できるスペースの確保が重要です。また、便器への移乗をサポートする手すりや座位を安定させる背もたれの設置も求められます。座位のバランスがとりにくい身体状況の方の脱衣介助が必要な場合、介助者の負担軽減のために大型ベッドを設置します。- 車椅子に乗って開閉できる扉
- 車椅子で回転できる広さ
- 手すりや背もたれの設置
- 大型ベッドの設置
オストメイト用設備を有するトイレ
大腸がん、膀胱がんなどの治療により、お腹に排泄のためのストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造設した人をオストメイトといいます。トイレでは、排泄物の処理やストーマ装具の交換・装着、汚れた腹部を洗浄するための設備が必要です。- ・立ったまま排泄処理ができる汚物流しの設置
・腹部の汚れやストーマ装具をすすぐ温水シャワー
・腹部のケア用品やストーマ装具を置ける小物置き
・手荷物やゴミ袋を掛けられるフック
・身だしなみを整える鏡や着替え台 - 出典:国土交通省「高齢者、障害者等の円滑な移動等に
配慮した建築設計標準」(令和3年3月)
乳幼児用設備を有するトイレ
乳幼児連れで外出先のトイレを利用する場合、ベビーカーごと入れる個室や月齢・年齢に応じた設備の設置が求められます。- ・ベビーカーごと入れる広めのトイレ個室
・大人用個室内へのベビーチェアの設置
・月齢・年齢に対応した設備(おむつ替えシートや着替え台)
・荷物置台やフックの設置
一般トイレ
一般トイレは、足腰が弱く動作が不安定になっている高齢者や、視覚障害者への配慮も必要とされています。初めて利用することも多い外出先のトイレで「流し方がわからない」「洗浄ボタンと間違えて呼び出しボタンを押した」などの問題が起こらないよう、配慮が必要です。※- ・足腰に優しい洋式便器
・手すりの設置
・分かりやすく見やすいボタン
・器具配置の統一など
https://www.sanitary-net.com/trend/rules_for_public_restroom.html
男女共用トイレ
近年では、異性による介助・同伴利用(高齢者、知的・発達障害者、視覚障害者など)、性的マイノリティの方などの利用に配慮した、男女共用トイレのニーズが高まっています。 男女別トイレが利用しづらい人の例- 異性による介助
- 異性による同伴
- 性的マイノリティ(トランスジェンダー)
だれもが気兼ねなく安心して利用できるトイレ
- 利用者の多様化に伴うトイレの整備が進む一方で、配慮のために様々な
器具が設置された結果、多機能トイレを利用したい人が集中し、混雑していて「使いたいときに使えない」という声も上がっています。
多様な利用者がスムーズに利用できるよう、従来の多機能トイレ内にあった機能・設備をトイレ全体に適切に分散配置することが重要となってきました。 - 出典:国土交通省「共生社会におけるトイレの環境整備に関する調査研究報告書」(令和3年3月)よりグラフ作成
「機能分散」の考え方
- 国土交通省「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(令和3年3月)に加筆
公共トイレに「心のバリアフリー」を
「心のバリアフリー」とは、様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うことです。(「ユニバーサルデザイン2020 行動計画(2017年2月ユニバーサルデザイン2020 関係閣僚会議決定)」より)
- 政府広報オンライン
「知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」」 リンクはこちら
国土交通省
「障害ってどこにあるの?こころと社会のバリアフリーハンドブック」 リンクはこちら(PDF)
国土交通省は、トイレの様々な設備や機能について、ポスター・チラシを作成し、トイレの適正な利用に関する広報啓発の取組を行っています。 リンクはこちら - 出典:国土交通省
「障害ってどこにあるの? こころと社会のバリアフリーハンドブック」
イラスト協力:TOTO株式会社 株式会社LIXIL