研究名: | 温水洗浄便座の吐水の微生物水準:生菌数、従属栄養細菌数に影響を与える要因、及び緑膿菌の挙動とその由来に関する調査研究 |
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研究機関: | 北里大学、慶應義塾大学 研究代表者 慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学名誉教授 大前 和幸 実施責任者 北里大学医療衛生学部講師 伊与 亨 研究協力者 東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野准教授 朝倉 敬子他 |
目的: | 前回調査で大学キャンパス内トイレの温水洗浄便座127基の衛生状態について断面研究を行ない、生菌数、従属栄養細菌数、緑膿菌、残留塩素等の関係について明らかにした。 今回、継続して長期間にわたる縦断的な調査研究を行ない、微生物指標の挙動および緑膿菌の由来等について調査し、温水洗浄便座の適切な微生物学的評価を進めた。 |
方法: | 大学キャンパス内トイレの温水洗浄便座(男性用12基、女性用1基)について、長期(約5年間)にわたり縦断的調査研究を実施した。 ①吐水細菌調査(残留塩素、生菌数、従属栄養細菌数、緑膿菌、大腸菌、腸球菌) ②緑膿菌の消長調査、POT型分類調査 ③緑膿菌の由来調査(製品分解調査、精密濾過膜設置等による緑膿菌調査) |
結果: | 前回調査で緑膿菌が検出された貯湯式2基から緑膿菌が検出され、特に1基では、約2年間検出された。残留塩素は0.1〜0.15 mg/L、生菌数は1CFU/mL以下、従属栄養細菌数が2×104CFU/mL程度であり、残留塩素と従属栄養細菌数の間に弱い負の相関関係が認められた。瞬間式の吐水の残留塩素、生菌数、従属栄養細菌数を比較したところ、貯湯式に比べ残留塩素は増加、従属栄養細菌数は減少(P<0.01)、生菌数は1CFU/mL以下であった。緑膿菌の由来調査では、定常的に吐水から緑膿菌が検出された貯湯式1基は水道配管側のフィルタ付近、貯湯タンク、吐水から緑膿菌が検出され、その後、精密濾過膜設置を追加してからは、その上流からのみ定常的に高濃度の緑膿菌が検出された。瞬間式1基ではノズル先端や吐水から緑膿菌が検出され、POT値は精密濾過膜設置上流で検出された緑膿菌のPOT値とは異なっていた。 |
結論: | 長期間にわたる縦断的研究で、温水洗浄便座の吐水中の生菌数は貯湯式・瞬間式ともに1CFU/mL以下、従属栄養細菌数は貯湯式が104CFU/mL程度、瞬間式が103CFU/mL程度で、残留塩素と従属栄養細菌数は弱い負の相関関係が見られた。 温水洗浄便座の吐水から検出された緑膿菌は、糞便由来と水道水由来であると推察され、水道水由来緑膿菌のPOT値は同じで、糞便由来はばらつきがあった。そして、いずれの由来の緑膿菌でも多剤耐性は示さなかった。以上のことから、温水洗浄便座の吐水の微生物水準は、総括的な衛生的安全性が維持されていることが示された。 |
掲載: | 学術論文はJournal of Water and Health vol.16,No.3 Jun 2018:346-358に掲載 詳細はこちら(外部サイト)をご覧ください。 |