1. 手指に糞便由来の微生物が付着すると・・・
排便の際に手指に付着した微生物が、食材や環境などを介して他のヒトの口に入ると、腸管感染症の原因になり得ることが分かっています。ノロウイルス胃腸炎、腸管出血性大腸菌感染症、赤痢、コレラ、A型肝炎などの種々の腸管感染症が生じるのです。
たとえば、ノロウイルス不顕性感染(感染はしているが無症状)の食品取扱者が、食パンの検品時にノロウイルスを付着させてしまい、それを給食で食べた1271名もの生徒がノロウイルス胃腸炎を発症した事例があります(イラスト1.)。
イラスト1. 排便後の手洗い不十分で、1271名ものノロウイルス胃腸炎患者が発生した。
なお、トイレットペーパーの重ね枚数ですが、排便後には4枚重ねで拭くヒトがもっとも多いことが分かっています。(グラフ1. イラスト2.)
グラフ1. は + をクリック
グラフ1. お尻を拭くときに使用するトイレットペーパーの重ね枚数(日本レストルーム工業会)
【男女計 温水洗浄便座使用者・不使用者計 シングル・ダブル計 n=1,748】
イラスト2. トイレットペーパー4枚重ね
しかし、4枚重ねでは糞便中の微生物は容易に通過できるのです。なぜなら、4枚重ねであっても細菌の100倍ほどの大きさの穴が多数あいているからです(図1)。
図1. 4枚重ねのトイレットペーパーの顕微鏡写真(×35)
0.1㎜ほどの穴(細菌の100倍ほどの大きさの穴)が多数あいている。